JAグループは現在「攻めの農業」を掲げており、私たち農協観光もその一翼を担うべく、さまざまな提案とサポートをおこなっています。私が所属する京都支店の案件でいえば、京野菜を世界に知ってもらうための晩餐会が代表的なものになります。この企画は入社した2013年からはじまったもので、第一回をパリのベルサイユ宮殿で開催しました。それ以降も、トルコのトプカプ宮殿、北京の宋慶齢故居、モスクワのペトロフスキー宮殿とさまざまな国で現地政府の協力のもと、文化交流事業として行なっています。
私はそのうちのトルコと中国での催しについては添乗員として、現地へ赴きました。
兵庫県出身の私はもともと京野菜には馴染みがなかったのですが、農協観光に入社し京都支店に配属となり、JAのお客様を訪問するうちにだんだんと京野菜について知るようになりました。とはいえ、あくまで日本料理の一食材としての認識でいましたが、晩餐会でトルコ料理や中華料理に使われているのを見て正直驚きました。日本からのJA関係者の皆様も感激されていましたが、現地の方々にも大変好評でした。また、メディアでも大きく報道され、京都ブランドを世界へと発信することもできました。私個人にとっても、世界的に由緒ある場所を貸し切っての晩餐会は一生忘れられない経験になりました。
私は入社2年目という、まだ経験が浅い時期にもかかわらずトルコの晩餐会へ参加させてもらいましたが、いま思うと「若いうちに勉強をさせてやろう」という上司の粋な計らいだったのかなと思います。晩餐会はトルコで開催されていましたが、ツアーの行程にはギリシャ観光も含まれていました。農協観光は若手に成長のチャンスを与えてくれる会社ですし、一つの壁にぶつかったときは先輩方が優しくフォローしてくれます。
トルコの翌年は中国にも行きました。中国はそれ以前にも添乗で何度か赴いていたので、ある程度慣れてはいましたが、いざ晩餐会となるとお客様も多く、京野菜がみごとに中華料理にマッチしていたことへの感動もあり、やはり印象に残る体験ができました。
ただトルコよりも中国の晩餐会への添乗の方が苦労しました。こちらが立てた計画どおりに現地ガイドが動いてくれず、お客様に見えないように苦労しながら、繰り返し「頼むから決めたとおりにやってくれ!」と懇願しました。中国の人はこちらが一歩でも引いたらやってくれない事もあったので、強気に交渉しなければなりません。いま振り返れば、国によって一緒に仕事をする現地ガイドやドライバーの性格や価値観が異なることを学ぶことができ、それも貴重な経験になったと思います。
この晩餐会は、第1回から第3回までは「世界三大料理」として、フランス、トルコ、中国で開催されてきたわけですが、第4回目からは新しいテーマとなり、その一番目がロシアで開催されました。今後どうするかはJAの方々がまさに検討しているところで、その決定により当支店の上司がツアーの相談を受ける、という流れになります。
いままでお話しした晩餐会の活動は、京野菜のブランドを世界へ発信するという目的で企画されている活動ですが、逆に世界から京都に来てもらう企画も面白いと思っています。もちろん、京都は日本を代表する観光地ですが、「京野菜を生産している現場を体験する」ツアーというのは新しい切り口になります。また、外国の方だけに限らず、日本国内の他地域からも「京野菜の収穫体験」や「京野菜を使った料理体験」などで、観光客を呼びこむことができると思います。このように農協観光はJAグループの旅行会社という強みを活かし、ユニークで内容の濃いプランをご用意できると考えています。
ただ観光して帰るという一過性のものだけではなく、より多くの方に京都の農産物に親しんでいただき、それが地域の活性化へとつながっていく。そのようなサイクルの中で、農業の新しい担い手が見つかる可能性もあります。後継者問題は京都に限らず、どの農家でも抱えていることですから、それを解決する一助を農協観光が果たせたら一番ですね。